1/ 3
http://www.jcr.co.jp
15- D- 0102 201 5 年 4 月 3 0 日
株式会社日本格付研究所(J C R)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
西日本高速道路株式会社
(証券コード:−)【新規】
長期発行体格付 AAA 格付の見通し 安定的 ■ 格付事由
(1) 道路関係四公団の分割民営化により 05 年 10 月に設立された 6 つの高速道路会社の 1 社で、全額政府出資 の特殊会社。旧日本道路公団が保有していた全国路線網等のうち名神高速道路、中国自動車道、九州自動 車道といった路線を引き継ぎ、事業基盤は近畿から中国、四国、九州、沖縄と広範囲に及ぶ。独立行政法 人日本高速道路保有・債務返済機構(機構)と締結した「協定」に基づき、高速道路の建設および管理・ 運営などを実施する高速道路事業のほか、サービスエリアの管理・運営を行うSA ・PA 事業などの関連事 業も手掛ける。格付は、政策上の重要性が極めて高い事業を行っていること、法令上国との結びつきが強 いことなどを反映し、日本国と同格とした。民営化 10 年目を迎えるにあたり、国は民営化に伴う経過措 置等に関することを規定した「日本道路公団等民営化関係法施行法」に基づき、民営化関係法の施行の状 況について検証し必要な措置を講じることになっている。当該検証において、高速道路事業の政策上の重 要性に影響を及ぼす措置が講じられないか着目していく。
(2) 全国に展開する高速道路網は、人・モノの機動的な移動手段として欠かせない社会インフラである。高速 道路事業では、必要な道路の効率的な建設・管理および債務の確実な返済を行うため「上下分離方式」の 事業スキームが採用されている。当社が建設した道路資産は、原則として工事完了後に機構に帰属し、そ の建設のために当社が自ら調達した社債や借入金は機構が引き受ける(重畳的債務引受)。当社は機構か ら道路資産を借り受け、協定に定められた道路資産賃借料を機構に支払い、機構はそれを原資として機構 の債務を返済する。料金徴収期間満了後すなわち債務返済完了後は、道路資産が国に帰属することなどを 踏まえると、当社は国が実施すべきインフラ整備事業を代行する役割を担っているといえる。
(3) 設立根拠法である高速道路株式会社法において、国による 1/ 3 以上の議決権の保有、役員の選・解任手続 きや社債発行計画、毎年度の事業計画に関する国土交通大臣の認可など、国による強い関与が規定されて いる。他方、当社と本州四国連絡高速道路株式会社(本四高速)について、本四高速が事業を営む高速道 路に係る機構の債務が相当程度減少し、かつ、本四高速の経営の安定性の確保が確実となった時点で、国 は合併に必要な措置を講じることになっている。現状の高速道路事業のスキームが継続すること、本四高 速の関連事業の規模が小さいことを勘案すると、合併後も当社の信用力に影響はないと判断している。 (4) 当社が機構に引き渡す債務の限度額、当社が機構から借り受ける道路資産の賃借料、当社が徴収する高速
道路料金の額などは、高速道路事業の収支が均衡するように協定で定められている。金利や建設コストの 上昇などで高速道路の建設費が増加する場合には、協定を変更することで対応が可能とされている。また、 一定の料金収入の変動時に賃借料を増減算させることが定められており、交通量の増減に伴う当社の利益 変動が抑制されている。激甚災害が発生した場合には、国からの補助金を原資とした機構からの無利子貸 付金により復旧事業を行うことも可能となっている。自然災害や事故、経済環境による金利変動や高速道 路需要の変化など、高速道路事業が抱えるリスクはさまざまなものが想定されるが、このように事業リス クを顕在化させない仕組みがある点は評価できる。
2/ 3
http://www.jcr.co.jp
い。関連事業にかかる債務も高速道路事業にかかる社債のクロスデフォルト条項の対象となることから、 高速道路債務の返済確実性を最重視するなかで、今後も多額の外部調達が必要となるようなリスクの高い 事業を展開することは考えにくい。
(6) 高速道路事業は堅調な交通量を背景に民営化以来黒字が続いていたが、14/ 3 期は利益剰余金を活用した 機構の債務引受の対象とならない高速道路の緊急補修・耐久性向上にかかる事業を実施したことなどから 赤字となった。今後も利益剰余金活用事業の実施、あるいは道路施設点検などの管理費が協定上の計画値 を上回る場合などで赤字となる可能性はある。ただ、関連事業では一定の利益水準を確保しており、高速 道路事業の利益変動を一部カバーしていることから、全社ベースで赤字となる可能性は低い。純資産につ いても、リスクバッファーとして十分な厚みがある点は評価できる。
(担当)加藤 厚・南澤 輝 ■ 格付対象
発行体:西日本高速道路株式会社 【新規】
対象 格付 見通し
3/ 3
http://www.jcr.co.jp
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 4 月 27 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:野上 正峰
主任格付アナリスト:加藤 厚
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、J C R のホームページ(http:/ / www. jcr. co. jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本 件 信 用 格 付の 付 与 にか か る方 法 の 概 要 は、 J C R の ホ ー ムペ ー ジ ( http:/ / www. jcr. co. jp) の 「 格 付 方針 等 」 に 、
「財投機関等の格付方法」(2014 年 3 月 13 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等) 西日本高速道路株式会社
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての J C R の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、J C R が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表
・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
J C R は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、
当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. J C R に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、J C Rが、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、J C Rは、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、J C Rは、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。J C R は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、J C Rの格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。J C Rの格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。J C Rの格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、J C Rが保有しています。J C Rの格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、J C R に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NR S R O 登録状況
J C R は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating O rganization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■ 本件に関するお問い合わせ先